【色補修】HERMES/ケリー
ご依頼のきっかけ
こちらのバッグは、お客様がご自身の節目に選ばれた、いわゆる「ファーストケリー」として迎え入れられた一品です。
初めて手にした時の高揚感や、これから一緒に時間を重ねていく期待感も含めて、大切に使われてきたことが伝わってきました。
Before

長年の使用により、全体の色味が少しずつ落ち着き、艶の出方にばらつきが見られる状態でした。
大きな傷みがあるわけではありませんが、こうした変化は日常の中で自然に起こるものです。
ケリーはHermèsの中でも革の表情がとても繊細で、部分的に手を入れるとかえって違和感が出やすい特徴があります。
そのため今回は、目立つ箇所だけを直すのではなく、全体の印象が自然につながるよう、色のトーンを丁寧に整える方法を選びました。
状態としては、決して悪いものではありません。大きなダメージがあるわけではなく、長く使われてきた中で自然に現れた、よくある経年変化の範囲でした。このような状態のバッグほど、修理の判断が仕上がりを左右します。
何かを足すことよりも、どこまで手を入れ、どこで止めるか。
「何をするか」以上に、「何をしないか」を決めることの方が重要になります。
After

今回は、全体の印象が不自然にならないよう、色味や艶の流れを丁寧に見極めながら整えています。
必要以上に手を加えず、このバッグが本来持っている表情や空気感がきちんと残ることを優先しました。
プロの解説
目立つ変化を出すことよりも、手に取ったときの違和感が消えていること。
その積み重ねが、結果として仕上がりの差につながると考えています。
お客様のコメント
お渡しの際、お客様はしばらくバッグを眺めたあと、
「正直、ここまででいいと思ってなかったです。」と、静かに言葉を添えてくださいました。
修理内容
・色補修
・ハンドル交換
・コーティング
