HERMÈS Birkin|時間を脱いで、その佇まいを取り戻す

美しいバッグほど、傷みは目に留まります。

角の擦れ。色の薄れ。艶の変化。

ひとつひとつは小さなものでも、それらが重なると、バッグはいつの間にか本来の印象を遠ざけてしまいます。

全体に傷みが広がっていた、ひとつのバーキン。

私たちが向き合ったのは、傷を隠すことだけではありません。このバッグがもともと持っていた、凛とした空気をどう取り戻すかということでした。

色を重ねすぎれば、革の表情は失われる。

整えなければ、傷みばかりが目に映る。

その間にある、ほんのわずかな美しさを探しながら、全体の色と艶をつないでいきます。

仕上がった姿には、新品の緊張感とは違う美しさがあります。

使われてきた革だけが持つ、やわらかな気配。

そして、再び手にしたくなる品格。 時間を巻き戻したのではありません。重なっていた傷みをそっと脱がせ、このバーキンらしい佇まいを、もう一度表に戻したのです。

二子玉川 美靴工房

テクニカルディレクター 保科美幸

・クレンジング
・色補修
・コーティング